なぜ、こんなにも読者の共感を得られるのか。
知りたくありませんか。
今、話題の小説『82년생 김지영(82年生まれ キム・ジヨン)』について。
2016年11月に出版された『82년생 김지영』は、韓国女性の共感を呼び100万部を超えるベストセラーに。
売上数は、社会現象としても注目されました。
作品そのものの力に加えて、刊行当時の韓国社会の状況がその広がりを後押ししたといわれています。
その人気は、世界でも。昨年12月発行の日本語版『82年生まれ、キム・ジヨン』は、出版直後アマゾン「アジア文学部門」で人気1位だったそう。
今日は、本の紹介とゴールデンウィーク特別講座のお誘いです。
『82년생 김지영』を原文で読み、言葉の裏に隠されている韓国社会や家族、人間関係などを学んでみませんか。
全体的に感傷的な表現は少なく、平易で読みやすい文章です。
ご一緒に読み進めていきましょう。(ブログの最後に「韓国語版 試し読み」ページを紹介)
主人公は、82年生まれのキム・ジヨン。
平均的な家庭で育ち、大学卒業後は広告代理店に勤務。IT関連の中堅企業に勤めるチョン・テヒョンと出会い結婚、子どもはひとり。彼女の人生は、いたって平凡といえます。
しかし、ある日、キム・ジヨンは異常な症状に。それはなぜなのか。
彼女を取り巻く、学校、職場、雇用市場、‘독박 육아※’と家族関係…
小説は、キム・ジヨンの生まれた1982年からその半生を振り返りながら、彼女が幼少期から大人になるまでに経験してきた様々な理不尽さや不平等、女性であるがゆえの困難を克明に描きだします。
作品の主な体裁は、キム・ジヨンを診察する精神科医のカルテ。
主人公の記憶を土台とした告白を軸に、それを後押しする各種統計資料と記事が30代を生きる韓国女性たちの普遍的な日常生活を再現しています。
著者の조남주(チョ・ナムジュ)は、キム・ジヨンよりも少し年上の1978年生まれ。
放送作家として、ドキュメンタリー番組などを10年間担当したジャーナリストです。
その経歴からか『82년생 김지영』は小説でありながら、韓国女性の現場レポートのような作品に仕上がっています。
김지영 씨가 회사를 그만둔 2014년, 대한민국 기혼 여성 다섯 명 중 한 명은 결혼, 임신, 출산, 어린 자녀의 육아와 교육 때문에 직장을 그만두었다. 한국 여성의 경제활동 참가율은 출산기 전후로 현저히 낮아지는데, 20~29세 여성의 63.8퍼센트가 경제활동에 참가하다가 30~39세에는 58퍼센트로 하락하고, 40대부터 다시 66.7퍼센트로 증가한다. --- p.146
キム・ジヨンさんが会社を辞めた2014年、大韓民国の既婚女性5人中1人は結婚、妊娠、出産、幼い子供の育児と教育のために職場を辞めた。韓国女性の経済活動参加率は出産期前後で顕著に低くなるが、20~29歳女性の63.8パーセントが経済活動に参加し、30~39歳には58パーセントで下落して、40代から再び66.7パーセントに増加する。 --- p.146
韓国語能力試験(TOPIK)の作文課題を思い出してしまいました。
問題文の資料にちょっと似ていますよね。
主人公を通して韓国社会を理解することが、作文対策にもなりそうです。
小説の舞台である韓国では、1999年男女差別を禁止する法案が制定されました。
男女差別が消えるかのように思えましたが、内面化された性差別は変わらず、むしろ見えにくくなっただけのよう。
세상이 참 많이 바뀌었다. 하지만 그 안의 소소한 규칙이나 약속이나 습관들은 크게 바뀌지 않았다. 김지영 씨는 혼인신고를 하면 마음가짐이 달라진다는 정대현 씨의 말을 다시 한번 곱씹었다. 법이나 제도가 가치관을 바꾸는 것일까, 가치관이 법과 제도를 견인하는 것일까. --- p.132
世の中が本当に多く変わった。だが、その中のわずかな規則や約束や習慣は大きく変わらなかった。キム・ジヨンさんは婚姻届を出せば心がけが変わるといったチョン・テヒョンさんの話をもう一度じっくりかみしめた。法や制度が価値観を変えるのだろうか、価値観が法と制度を牽引するのだろうか。 --- p.132
先日の食事会。友人たちとの会話で、『82년생 김지영』が話題となりました。
「あらすじを聞いたら、なんとなく内容がわかってさぁ」「本は持っているけれど、読まなくてもいいかなって」といった2人はどちらも男性。
女性たちが前のめりで興味を示したのに、男性は30代と50代半ばが同じ感覚だなんて…
죽을 만큼 아프면서 아이를 낳았고, 내 생활도, 일도, 꿈도, 내 인생, 나 자신을 전부 포기하고 아이를 키웠어. 그랬더니 벌레가 됐어. 난 이제 어떻게 해야 돼?
--- p.165
死ぬほど痛い思いをして子どもを産んだし、私の生活も、仕事も、夢も、私の人生、私自身を全部あきらめて子供を育てた。すると虫けらになった。 私は今からどうしなければいけないの?
--- p.165
「벌레」になる感じ、生まれながらにして勝ち組の男性にはわからないかもねぇ。
でも、わかるのが怖いだけなのかもしれない。もしかしてだけど…
韓国社会を描きながら、日本についても観察眼的に見て感じることができる作品。
似たような社会背景を持つ韓国と日本で生きるなら、ぜひ読んでおきたい一冊です。
それにしても、日本と韓国って言葉も文化も重なる部分が多いですね。
だからこそ、原文で内容を理解をすることが大切です。
ゴールデンウィーク特別講座は、韓国社会、歴史・文化に造詣が深い講師が担当。
『82년생 김지영』の人物とデータをどう読み解くか、期待していてください。
*韓国小説連続講座(ゴールデンウィーク特別講座)
日程:全6日間(4月28日,29日,5月1日,2日,4日,5日)午前/午後/夜クラスの3つがあります。
くわしくは、こちらをご覧ください。
http://seoulkorean.jp/special_gw.html
*韓国語版 試し読みページ
「Kakaopage〈82년생 김지영〉조남주」で試し読みができますのでぜひ。
https://page.kakao.com/home?seriesId=49676812
・累積販売部数が100万部を越えるのは、2007年김훈の『칼의 노래』、2009年신경숙の『엄마를 부탁해』以来、9年ぶりだそう。海外版はベストセラーとなった台湾ほか、ベトナム、イギリス、イタリア、フランス、スペインなど16か国での翻訳も決定。
・韓国で2019上半期に映画公開予定。主人公キム・ジヨンは정유미(チョン・ユミ)、夫のチョン・デヒョンは공유(コン・ユ)が演じると話題に。2人は「トガニ 幼き瞳の告発」「新感染ファイナル・エクスプレス」に続いて3作目の共演だそう。この作品世界を김도영(キム・ドヨン)監督はどのように描くのか期待が持たれている。
・翻訳した本の良さはもちろんあるが、それは「翻訳者によるまたひとつの作品」ともいえる。両国の表紙デザインの違いも大きい。
※독박 육아(督迫育児)
독박(督迫)とは、심하게 자주 독촉함.(ひどくしばしば督促する)こと。
督迫という単語が日本語にはありませんが、「독박 육아」とは、「ひどくせきたてられる育児」というように訳すことができそうです。
小説でも子育てに対して、親族の圧力を感じ苦しむ場面が見られます。
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