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「18世紀ソウルの日常」を感じる -江戸東京博物館

■2019/11/09 「18世紀ソウルの日常」を感じる -江戸東京博物館
 JR両国駅といえば、駅前にある国技館。改札口近くには、横綱の大きなパネルと手形があり、駅を降りた時から伝統文化に触れる工夫がされています。
国技館の隣にあるのが江戸東京博物館です。ジオラマの世界に飛び込んだような常設展が人気で、江戸時代から現代までの生活の移り変わりや文化を体験できます。
 
そこで、現在「18世紀ソウルの日常 -ユマンジュ日記の世界-」という企画展を開催中です。
1755年、漢陽(ソウル)に生まれたユマンジュ(兪晩柱以下、カタカナ)の日記を通して、そこに生きた人々の暮らしぶりを再現したもので、韓国のソウル歴史博物館で2016年11月から2017年3月に開催された「1784 유만주의 한양」という展示が基本。ひとりの日常に着目しながら、漢陽の風景や季節の移り変わり、人々の生活を紹介しています。
 
日記を遺したユマンジュは、文臣であった兪漢雋の息子として生まれました。
一族の杞渓兪氏は、漢陽を代表する由緒ある家柄のひとつで、多くの官僚を輩出したことで知られています。しかし、ユマンジュは日記が世に出るまで人々に知られる人物ではありませんでした。
 
名門の家に生まれたとはいえ、ごく普通の人だったといえるユマンジュ。
彼は自らの日記に「欽英(フムヨン)」と名付け、日々の出来事を記録していきます。「欽英」とは、「花のように美しい人間の精神を敬い慕う」という意味だそう。自らの雅号として用いることもあったほど、美しいタイトルの日記。そこには、やわらかな日々の喜び、そして悲しみが記されていました。
 
残念ながら、ユマンジュは34歳で人生を終えます。
1775年から1787年まで、1日も欠かさずに書いた日記は24巻にもなりました。
彼は死ぬ前に「完成させられなかった文なので燃やしてください」と父親に言い遺したそうですが、それだけは父として叶えてやることができなかったそう。
 
日記には、次の文章が残されていました。
 
흠영 없으면 나도 없다.
나는 글을 못하지만 나의 글은 흠영 있고
나는 시는 쓰지 못하지만 나의 시는흠영 있으며,
나는 말을 못하지만 나의 말은흠영 있다.
나는 하나의 땅에서 경세제민하는 일을 없지만
나는 어떤 땅에서 경세제민하고자 것은흠영 있다.
흠영 없으면 나도 없다.
1783627양력 1783726
 
「欽英」がなければ私もいない。
私は文がうまくかけないが、私の文は「欽英」にある。
私は詩をうまくかけないが、私の詩は「欽英」にある。
私は言葉をうまく表せないが、私の言葉は「欽英」にある。
私はよく世を治め、民の苦しみを救えないが、
私がよく世を治め、民の苦しみを救おうとしたことは、「欽英」にある。
「欽英」がなければ私もいない。
1783年6月27日(陽暦1783年7月26日)
 
日記を燃やすことは、息子を二度失うようなものだったのではないか。
遺された日記を前にされたお父様の姿を想うと、悲しみがより深くなってしまいました。
 
ところで、「欽英」は漢字で書かれています。美しく整った文字は、見ているだけで背筋が伸びるようです。
そういえば、漢字… 古いハングルに出会いたくて訪れたこともあり、少しはっと。
両班や知識人の方々が、近代まで漢字で書き記していたのをすっかり忘れていました。(日記の文章として抜き出したハングルは図録にあったものです)
 
ハングルに触れたいという方は、ぜひ入り口近くのスクリーンの前へ。
 
大きなスクリーンに淡く色のついた墨絵の世界が映し出されます。
人生のはかなさをも感じさせる美しい絵には、韓国語のナレーションと音楽も添えられています。時々、ハングルで書かれた韓国語と日本語の字幕が出るのがうれしい。
 
それにしても、ユンマンジュの文章には、命を感じさせる力強さとはかなさが。
연꽃이 아주 많이 떠내려오다. (蓮の花がたくさん流れてきた)
 
この後にどのような言葉が続くのか。
スクリーンの前で立ち止まって、ゆっくり時を過ごしていただけたらと思っています。私は展示の中で、一番好きな場所でした。
 
また、今回の企画展は「18世紀の漢陽の日常」を紹介するところに焦点があたっています。生活用具である硯や水入れ、ユンノリ、古地図などの注釈も見どころの一つです。韓国語の解説もあるので、ハングル学習者にとっては楽しみが倍。古地図では景福宮や昌徳宮、ユマンジュも住んだという北村、南村などの地名も見つかり、さらに興味が深まります。
 
なお、この企画展は常設展フロアにあり、常設展の観覧料で見ることができます。
常設展には、13ヶ国語の音声ガイドの貸出しがあり、もちろん韓国語も。韓国語の案内で江戸から近代、現代のコーナーを巡るといつもと違った日本の魅力が感じられておすすめです。
「ユマンジュの日記」をきっかけに、韓国語に触れる1日を企画してみてはいかがでしょうか。
 
*江戸東京博物館
18世紀ソウルの日常-ユマンジュ日記の世界 
2019年10月22日〜12月1日
常設展には、音声ガイドだけでなく、ボランティアによる展示ガイドもあります。
所要時間は約1時間30分~2時間。韓国語ガイドもあり無料ですので、韓国のご友人とご一緒にぜひ。



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