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人々を生かすこと、それが私たちの仕事だ

■2020/05/27 人々を生かすこと、それが私たちの仕事だ
 どのような時代、どのような社会でも、たくさんの人をひきつける作品には、必ずその理由がある。
重症外傷医療の現場を描いた『ゴールデンアワー(골든아워)』が、多くの人々の心を捉える理由は何であろうか。
 
사람들이 내게 먼저 시스템을 만들어놓고 움직여야한다고 지적했다. 그러나 시스템은 일개 의사 혼자 만들 수 있는 게 아니다. 아무런 시스템이 없는 상태에서 전문가라는 사람들의 회의만으로 시스템이 갖춰질 수 있다는 말은 허구다. - 이국종 골든아워 2 
 
人々が私に先にシステムを作っておいて、動かなければならないと指摘した。しかし、システムは一介の医師ひとりで作れるものではない。何のシステムもない状態から、専門家らの会議だけでシステムが備わるという話は虚構だ。 - 李國鐘『ゴールデンアワー 2』
 
新型コロナウイルスのニュースに心がゆれる中、本当にドキリとした。
 
『ゴールデンアワー(1,2)』は、外傷外科医の李國鐘(イ・ククチョン)教授の医療エッセイ。2002年から2018年上半期までの各種診療記録と手術記録などを基にして書き上げた報告書だ。重症外傷医療に対する冷静なまなざしは、システムが機能しない現実にあっても、人々の命を守ろうと力を尽くす医療者と消防隊員、軍人らの姿を浮き彫りにする。
 
第一巻の『ゴールデンアワー 1』は、重症外傷医療の国際標準を国内に導入していく過程が描き出される。医療スタッフと患者、保護者の痛烈な心情、常に危険な現場に置かれる肉体労働者や家庭暴力の被害者など、多様な人々の姿がそこにあった。
 
『ゴールデンアワー 2』は、教授が身を置く大学病院が「地域別重症外傷センター」と指定されてもなお国際標準にはるかに至らず、苦闘する様子が見られる。
地域に貢献すべきセンターは、事業の本質から抜け出し、複雑な利害関係に振り回されていた。システムの不備を身を粉にして整えた同僚が倒れる。そして、長年積み重ねられてきた組織の矛盾と不条理は、国民を悲しみ落とした大惨事を通じて赤裸々な姿をさらけ出した。
 
タイトルの「ゴールデンアワー」とは、生死の境となる60分のことだ。
重症患者は、60分以内に外傷治療が可能な病院で治療を開始しなければならない。手術室と集中治療室、麻酔科、輸血の準備、直ちに手術ができるよう、さまざまな分野の医療資源が必要とされる。しかし、現実はあまりにもかけ離れていた。平均移送時間245分、その間に生きられたはずの患者が目の前で死んでいく。
 
한 번의 수술로 기적같이 환자를 살려내고 보호자들의 찬사를 받는 모습은 영화에서나 존재한다. 실상은 답답하고 지루한 긴 호흡으로 환자를 살펴야 하고, 그런 중에 더없이 비루한 현실까지 감내해야 하는 것이 외상외과의 일이다. - 2권 47쪽
 
一度の手術で奇跡のように患者を救い、保護者たちの賛辞を受ける姿は映画にしか存在しない。実際は、息苦しくて退屈な長い息遣いで患者を見なければならず、そのような中でこのうえなく汚らしい現実まで耐えなければならないのが、外傷外科医の仕事なのだ。- 2巻47ページ
 
ヒーローなんかではいられない現実。
「医療従事者の皆さまありがとう」SNS上に流れるこんな言葉が、空虚にさえ思えてくる。
 
“사람을 살리는 것, 그것이 우리의 일이다.”(人を生かすこと、それが私たちの仕事だ)
“막을 수 있었던 수많은 죽음을 목격하고도 왜 우리는 변하지 못하는가? ”(防げたはずの数多くの死を目撃しても なぜ私たちは変わらないのか。)
 
力強くシンプルな言葉がぐっとくる。
そして、作品は「何をもってしたら、変わることができるのか」と考える機会を私に与えてくれた。
 
『ゴールデンアワー(1,2)』が記録した2002年から2018年前半までの17年間。
韓国では、2011年に「アデン湾夜明け作戦(아덴만 여명작전)」、2014年には「セウォウル号沈没事故(세월호 침몰 사고)」が起こり、2017年5月に政権が変わった。現政府は「‘삶의 질’을 개선하겠다.(‘生活の質’を改善する)」と打ち出したという。
 
2020年、はたして医療現場は変わることができたのか…

2018年後半以降の変化を、今の私は知ることができない。しかし、著者の研ぎ澄まされた文章からは、この国の約束された未来を感じる。そう思いたくて仕方がない。隣の国の住人だけど…
 
たくさんの人をひきつける作品には、必ずその理由がある。
『ゴールデンアワー(1,2)』は、2018年10月の出版と同時にYES24総合ベストセラー1位。また、2020年上半期放送を目標にドラマ化も予定されているそうだ。
 
非常事態宣言が解除され、日常が戻りつつある東京。
今、人々に愛される作品を読み、その魅力をじっくり考えたり、誰かと話しあったりしてみるのはどうだろう。そこから、新しい「時代」が見えてくるのではないか。ひょっとしたら、自分を生かす道も…
ドラマの公開も近そうだから、それを観てからでもいいかもね。
 
*作者紹介 이국종(李國鐘)
重症外傷分野外科専門医。外傷および外傷後後遺症、蓐瘡など複合重症外傷治療の権威。
1995年亜洲大学校医科大学を卒業。2003年からアメリカ、イギリスの外傷センターで研修し、医療先進国の現実を目の当たりにした。2005年、論文「중증외상센터 설립 방안(重症外傷センター設立方案)」を発表。この論文は重症外傷センター建設案の基礎資料になった。
2011年、彼の医療チームが「アデン湾夜明け作戦」で負傷したソク・ヘギュン船長の命を救い、重症外傷治療の特殊性と重要性が世に知られることとなった。2012年、全国拠点地域の重症外傷センター設立は、「応急医療法改正案」通過の契機となった。
現在、亜洲大学校病院外傷外科課長であり、京畿南部圏域重症外傷センター長として活躍。国際標準に合う重症外傷医療システムを定着させるために尽力している。



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