韓国料理といえば、唐辛子。
鮮やかな色と刺激的な辛さは食欲をさそいます。
ソウル韓国語学院があるのは新大久保です。
韓流の街として知られ、週末には韓国料理を求める若い人でいっぱい。夜8時ごろに路地を歩くと、店の外にまで人が並んでいます。
現代人は、辛いもの好きが多いですね。真っ赤な唐辛子は、人も街も元気にしてくれるようです。
でも、この地域と唐辛子の結びつき。最近のことだけではないんです。
1810年代に編纂された『新編武蔵風土記稿』は、地域の自然や歴史、農地、産品、神社・寺院、名所・旧跡、人物、習俗などを調査したものです。
「豊島郡巻一・産物」には、次のように記されています。
豊島郡は現在の練馬・豊島・板橋・北・荒川・台東・文京・新宿の各区と千代田・港・渋谷区の一部にあたります。
蕃椒
四ッ谷内藤新宿及其邊ノ村々ニテ作ル世ニ内藤蕃椒ト呼ベリ
蕃椒とは、唐辛子の別名です。
当時は八房唐辛子という種類を栽培していました。香りもよく、辛みが抑えられているのが特徴で、江戸の人々に好まれた蕎麦とよく合いとても重宝されたそうです。
内藤新宿とは、品川、千住、板橋と並ぶ江戸四宿の一つとして栄えた宿場で、江戸時代、高遠藩主内藤氏の下屋敷があったことから付けられました。
蕃椒と同じ「産物」の欄には、蘿蔔(らふく・すずしろ)も記されています。蘿蔔は、七草粥で知られる大根です。
蘿蔔
郡内練馬邊多ク産スイツレモ上品ナリ其内練馬村内ノ産ヲ尤上品トスサレハコノ邊ヨリ産スル物ヲ(既)シテ練馬大根ト呼人々賞美セリ
「大根の練馬か、練馬の大根か」といわれるほど有名な練馬大根。
それと並び称されるくらい、新宿では唐辛子の栽培が盛んでした。色づくころには四谷から新宿、大久保あたりまでを赤く染めたといわれています。
収穫期を迎えた鮮やかな唐辛子と乾燥のために広げられた深みある唐辛子。どちらも美しい風景です。
しかし、地域の都市化と人々がより刺激の強い「鷹の爪」という品種を好みはじめたことから栽培は途絶えてしまいました。少し残念ですが、時代とともに求められる味は変化していくものですね。
今、新宿の唐辛子といえば韓国料理です。
韓国語を学んでいるからでしょうか。江戸時代の内藤蕃椒、唐辛子との結びつきをどこかで感じてしまいます。
そんな歴史との縁を楽しみながら、今週末は韓国料理店でハングルの実戦練習をしてみるのもよいかもしれません。
新宿は現代の唐辛子畑! 畑作業で韓国語会話の足腰が鍛えられること間違いなしです。
《写真》
*今年の八房唐辛子。つやつやでまっすぐ上に向いていて、見ているだけで向上心が湧いてきます。
新宿のデパートで324円でした。新宿の唐辛子、ちょっと高級品なんですよ。
*『新編武蔵風土記稿』内務省地理局 明治17年6月:国立国会図書館デジタルコレクションより
・巻之6山川,巻之7山川,巻之8芸文,巻之9豊島郡之1,巻之10豊島郡之2:コマ番号68
・巻之11豊島郡之3,巻之12豊島郡之4,巻之13豊島郡之5,巻之14豊島郡之6,巻之15豊島郡之7,巻之16豊島郡之8,巻之17豊島郡之9:コマ番号4
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