新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のニュースで、ある詩を思い出しました。
숲 강은교
나무 하나가 흔들린다.
나무 하나가 흔들리면
나무 둘도 흔들린다.
나무 둘이 흔들리면
나무 셋도 흔들린다. ―(後略)
林 姜恩喬 ※以下、茨木のり子訳
一本の木が揺れる
一本の木が揺れると
二本めの木が揺れる
二本めの木が揺れると
三本めの木も揺れる ―(後略)
詩は「나무 하나의 꿈은 나무 둘의 꿈…(ひとつの木の夢は ふたつめの木の夢…」と続きます。
강은교(姜恩喬)さんは、虚無意識を通して存在の意味を探し求める詩人。現実的な見解で時代と歴史を探求する作品を生み出してきました。ご紹介の「숲」は、森の中で揺れる木々を通して、人々が互いに夢を分かちあっていること、共に生きている存在であることを教えてくれる作品です。
「COVID-19が早く終息しますように」
「病で苦しんでいる方々、医療に携わる皆さんが早く安心できる状態となりますように」
世界がCOVID-19で揺れる中、人々がひとつの夢を共有しています。この詩が生まれたとき、作者は未来を感じたのかもしれません。
全文を最後に掲載しましたので、ぜひ読んでみてください。
「ハングルにはハングルの豊かさがあり、日本語には日本語の豊かさがある」と語る茨木のり子さんの訳詩もつけました。茨木さんは、タイトルを「林」と日本語訳されています。それぞれの言葉の調べも楽しんでいただけるとうれしいです。
作者のご紹介を少し。
国文学者である강은교さんは、1945年に現在の함경남도(咸鏡南道)で生まれました。함경남도は、韓半島の北東、現在の北朝鮮にあります。ハムン冷麺で有名な「함흥시(咸興市)」がある地域です。
1968年『사상계(思想界)』新人文学賞で登壇し、詩集として『허무집(虚無集)』、『풀잎(草の葉)』、 『빈자일기(貧者日記)』、『소리집(声集)』のほか、複数の書籍を出版しています。詩人としてだけでなく、翻訳家、大学教授としてもご活躍です。
彼女が詩文学を教える中で見えたのは、習作過程で挫折を味わい、詩の創作をあきらめる学生たちの姿だそう。それが次にご紹介する「시 창작을 위한 7가지 방법(詩を創作するための7つの方法)」を書くきっかけとなりました。
現在、外出を控えている方も多いかと存じます。7つのアドバイスを参考に詩を作ってみるのはいかがでしょうか。
첫째 장식 없는 시를 쓸 것,
둘째 시는 감상이 아니라 경험임을 기억할 것,
셋째 시가 처음 다가왔던 때를 돌아보고 자신을 믿을 것,
넷째 전율할 줄 아는 힘을 기를 것,
다섯째 틀을 깨는 연습을 할 것,
여섯째 낯설게 하기와 침묵의 기법을 익힐 것,
일곱째 너무 많은 것을 소유하려 하지 말 것 등이다.
一つめ 装飾のない詩を書くこと、
二つめ 感想ではなく経験したことを記憶すること、
三つめ 詩が最初に近づいて来た時を振り返って自分を信じること、
四つめ 戦慄の力を養うこと、
五つめ 枠を破る練習をすること、
六つめ 不慣れにすることと沈黙の技法を身に着けること、
七つめ あまり多くを所有しないことなどだ。
「감상」は、感想ではなく感傷だともいえなくもないですし、「낯설게 하기」は常に新鮮でいることかも…
創作には、詩との向き合い方が重要なようですが、日本語だと技巧的になりがち。
それなら、ハングルで書いてみてはいかがでしょうか。習い始めた時の気持ちを振り返り、飾りのないシンプルな表現で。
書き出せないという方は、桜を眺めるのもよいかもしれません。春のたよりは、すぐそこです。
それまでは準備運動。
COVID-19が季節を美しいと感じる時間を奪いませんように…
こんな心の奥底をもハングルで表現できたらうれしいです。
では、韓国語で詩人デビューを“이렇게 이렇게 함께(このようにこのように一緒に)”。
*詩の紹介です。韓国語と日本語を掲載しました。
숲 강은교
나무 하나가 흔들린다.
나무 하나가 흔들리면
나무 둘도 흔들린다.
나무 둘이 흔들리면
나무 셋도 흔들린다.
이렇게 이렇게
나무 하나의 꿈은
나무 둘의 꿈
나무 둘의 꿈은
나무 셋의 꿈
나무 하나가 고개를 젓는다.
옆에서
나무 둘도 고개를 젓는다.
옆에서
나무 셋도 고개를 젓는다.
아무도 없다.
아무도 없이
나무들이 흔들리고
고개를 젓는다.
이렇게 이렇게
함께.
林 姜恩喬 ―『茨木のり子集 言の葉』より
一本の木が揺れる
一本の木が揺れると
二本めの木が揺れる
二本めの木が揺れると
三本めの木も揺れる
このように このように
ひとつの木の夢は
ふたつめの木の夢
ふたつめの木の夢は
みっつめの木の夢
一本の木がかぶりを振る
横で
二本めの木もかぶりを振る
横で
三本めの木もかぶりを振る
誰もいない
誰もいないのに
木々たちは揺れて
かぶりを振る
このように このように
いっしょに
『茨木のり子集 言の葉』で「わかりやすい言葉、具体的なイメージ、抽象化の能力などに、なみなみならぬ力量を感じる。※」と姜恩喬さんを評した茨木のり子さん。「林」の解説は文学的です。ぜひ手に取って読んでみてください。※P202
*茨木のり子
1926年大阪生まれの詩人、童話作家、エッセイスト。韓国語の勉強は50歳になってから始め、韓国の文学や文化を紹介する書籍も多数出版されました。
ご紹介した「林」も掲載されている『韓国現代詩選』には、姜恩喬、金芝河、趙炳華、洪允淑、李海仁、申庚林、河鐘五、黄明杰、金汝貞、黄東奎、呉圭原、崔華国12人の代表的な詩62篇が選ばれています。
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