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Virusは、ウイルス、ビールス、それともバイロス?

■2021/07/01 Virusは、ウイルス、ビールス、それともバイロス?
 新型コロナウイルスの発生以来、「ウイルス」という言葉を聞かない日はありません。
 
韓国語では「바이러스」。
この「바이러스」という単語をはじめて見たのは、2008年の韓国ドラマ『ベートーベン・ウィルス(베토벤 바이러스)』でした。
「바이러스」の発音をカタカナで書くとしたら「バイロス」かなぁ、日本語とちょっと違うなぁと、当時は新しいものを見つけたうれしさがありました。なんだかとても懐かしいです。
 
さて、ラテン語由来の「ウイルス」。現在、「Virus」はウイルスと書くことがほとんどなのですが、55年ほど前までは…
 
先日、日本語学を研究している方がTwitterで、日本ウイルス学会の資料『ウイルス』15巻3号(1965)を公開されていました。
 
資料のタイトルは、「Virusの用語統一に関する要望書」。
最初は、日本ウイルス学会会長 福見秀雄の言葉です。日本新聞協会殿ではじまり、“Virusの日本語の用語に関し(中略…どうやら人々が混乱しているので)、「ウイルス」を採用されることを希望します。(後略)”とあります。
当時は、Virusの日本語として統一したものはなく、「ウイスル」のほか「ビールス」「バイラス」という表現がさまざまな場所で使用されていたそう。
 
そして、服部四郎の「ウイルス VS. ビールス問題に関する意見書」が続きます。
興味深いのは、日本ウイルス学会で「ウイルス」を使うこととなった経緯と理由、「ウイルス」と「ビールス」の単語がどこで使われているかという内容に加え、後半、愛する日本語は美しくあるべきだとあるところです。
 
いくつか引用すると「それは愛する日本語を貧しく醜くすることだと思いますし」「もちろんカナでどう書いたからといつて外国語に近い音はでない, しかし曲りなりにも似た発音ができる今日の日本人がなぜ醜く貧しい言葉を子孫に残そうと「努力」するのでしようか」「外来語のカナ表記を論じているのでなく, 妥当で美しい日本語をもり立てようとしているのであることをここに再度指摘したいと思います」といった感じです。
 
日本ウイルス学会の要望書で「美しい日本語」という表現って、少し戸惑いませんか。
 
調べてみると、意見書を書いた服部四郎は、1908年〈明治41年〉生まれの言語学者で、東京大学名誉教授。『国語ローマ字の綴字法の研究』『音声学』『音韻論と正書法』『日本語の系統』など、言語学に関する著書が多数ある方でした。
言語学者だと知り、意見書の内容に納得。「ことば」って時間だけではなく、人々の力でも変化するのですね。
 
韓国では近年「ことば」について表記の見直しや統一がなされてきています。キーワードのひとつは「美しい私たちのことば」。
「ウイルス」という単語を通して、どの時代もどの国の方々も美しいことばを大切にしたいという思いがあることをあらためて感じてしまいました。もしかすると日本語のウイルスも韓国語の바이러스も、これから変わることがある…かもしれません。
 
ちなみに、意見書冒頭の福見秀雄は、東京帝国大学出身の細菌学・ウイルス学者でコレラ菌の権威。『ウイルス入門』『インフルエンザ』『社会の中の感染症』などの著書や論文が多数あります。福見が今の日本にいらしたらなんとおっしゃるのか、つい気になってしまいました。
 
最後にタイトルの“Virusは、ウイルス、ビールス、それともバイロス?”ですが、日本語訳は「ウイルス」、韓国語訳は「바이러스」が、今のところ違和感なさそう。
来週に予定されている韓国語能力試験(TOPIK)、秋のハングル能力検定試験では、変化を先取りしないでね。
では、みなさま、파이팅!



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